「自らが選択し、そうしたいと思ったから行動した。その結果、道が開けのだから導きでもなんでもない」
信仰そのものを否定する言い方に、幼い頃からイリージアを信仰してきたフィーナにとってヘルバの意見は意外だった。一瞬、無礼な言い方にフィーナは反論しそうになるが、ダレスから有翼人の生活全般について学んでいるので、信仰の有無を咎めることができない。
これこそが各種族の認識の違いというもので、ひとつの種族の常識を当て嵌めてはいけないというもの。フィーナもダレスから多くのことを学習していなければ、ヘルバを頭ごなしに否定していた。しかし身に付けた知識は役に立ち、ヘルバとの絆を傷付けずに済んだ。
同時に、人間が弱い生き物だと認識してしまう。他の種族は信仰に頼らずとも生きていけるが、人間は女神に寄り添いその存在自体を生きる糧としている。ヘルバに面と向かってそのように言われた今、フィーナは彼の言葉の通り自分の意思で生きているのか不安になる。
「有翼人は、強いのでしょうか?」
「どういう意味かな?」
「私達は、何かがありますと女神様に祈りを捧げてしまいます。ですが、それは違うと言いました」
「種族が違うのだから、それは仕方ない。ただ、全てのことを導きとして片付けるのはいかがなものか。有翼人であれ人間であれ、結局最後は自分で選択し突き進まないといけない」
「そう……ですね。有難うございます。何だか、わかったような感じがします。今の話しをダレスが聞いたら、同じことを言われるかもしれません。また、彼に怒られてしまいます」
「き、気張らないように」
気合が入るフィーナに圧倒されるヘルバであったが、竜の血を引いているダレスと共にいたいというのなら一方的な見方ではなく、多方面から見ることができる目を養って欲しいからこそ、厳しい意見を言う。それを素直に受け入れるフィーナに、ヘルバは何処か安心していた。
だが、それ以上に気に掛かるのが人間の中に深く溶け込んでいる女神への信仰。それぞれの種族の特徴を理解しているのでヘルバは信仰自体を否定するわけではないが、いささか度が過ぎる。
過剰なる信仰は女神が人間に与えた「癒しの血」が全ての発端だろうが、女神は血を齎す巫女に自身の愛情を示すことはしない。また常に傍観者で、人間の増徴する行動を咎めることはしない。名ばかりの女神に、ヘルバはその存在が現在の歪んだ状態を生み出していると想像する。


