「でも、こうしていたかった。貴方が側にいてくれるだけで、辛い採血も耐えることができたの」
フィーナはダレスから離れると、真っ直ぐな瞳で見詰める。一瞬、言葉を発することに躊躇いを覚え、また極度の緊張感が身体を支配し赤面してしまう。それでもやっとの思いで言葉をつむぎ出す。
「貴方を愛している」と――
彼女からの突然の告白にダレスは目を見開き身体を硬直させるが、それに対しての返答を口にしない。それどころか嬉しいという感情は見受けられず、どちらかといえば切ないという感情が彼の瞳に映し出され、フィーナの告白を受け入れられないことを雰囲気で示す。
ダレス自身も、薄々フィーナが抱いている感情はわかっていた。わかっているが互いの立場を考えれば、彼女の告白を喜んで受け入れることはできない。ましてや血の呪縛の影響で感情を表面に出すことはできず、今のダレスは人間ではない別の生き物に変貌している。
身体を動かし、フィーナと距離を取るダレス。彼は身を丸め何度も深呼吸を繰り返し、ままならない状況の中で懸命に己の血と戦い、強い意思で呪縛を強制的に封じようと試みる。
だが、己の血を制御できない時期、いくら頑張ったところで一度竜の姿になってしまうと完全に人間の姿に戻るのは難しい。結果、大部分を竜の姿をしている状況でダレスは人間の姿を取る。
「……フィーナ」
「ダレス、私……」
「こんな俺を愛してくれるのは、嬉しい。だけど、貴女の気持ちを受け入れることはできない」
「どうして」
「俺は竜と巫女の血を引いた影響で、感情の起伏で身体は変わってしまう。このように、今も……」
「わかっているわ」
「でしたら、どうか……」
「でも、貴方のことが――」
「たとえ永遠の誓いをしても、俺は貴女を抱くことはできない。この肉体で、貴女を壊してしまう」
ダレスは竜の鱗を持つ利き手を彼女の目の前にかざし、これが現実ということを教える。また、彼は前々から感情の起伏によって竜の姿に戻ってしまうと言っていた。フィーナは初恋の相手に会えたということで熱に魘されていた状況であったが、冷静さを取り戻した今、大粒の涙が流れ落ちる。


