新緑の癒し手


「勿論、わかっているわ」

「でしたら、何故ですか」

「それは、貴方が……」

「事前に伝えておけば、良かったんだ」

 彼等のやり取りを遮るように、ヘルバの声音が響く。彼の言葉にダレスは親友に視線を向け、フィーナの守護は頼んだがこの場所に連れて来て欲しいとは頼んではいないと言い放つ。

「彼女の気持ちを考えろ」

「気持ち?」

「彼女も言っていただろう。お前が何も言わずに勝手に姿を消したから、心配していたって」

「確かに、このことを言わなかった俺も悪い。しかし、連れて来ていい理由にはならないぞ」

 普段は冷静に対処するダレスだが、相手が親友ということもあり口調は遠慮ない。その結果、彼の血の呪縛は表面に表れ、白い肌に竜の鱗が浮き出す。また、上手く制御ができない今、呪縛は身体に強く影響を与え、彼の双眸は爬虫類が持つ形に変化し相手に威圧感を与える。

「大丈夫か?」

「誰が悪い」

「今回は、お前が悪い」

 これについてきちんとフィーナに説明していなかった自分も悪かったと自覚しているのか、ダレスは押し黙りヘルバに反論することはしなかった。相手の感情を理解していない友人の態度にヘルバは嘆息した後、自分は席を外すから二人でじっくりと話した方がいいと提案する。

 彼の提案にダレスはどうしてそのようなことを言うのか尋ねるが、ヘルバは後のことは関係ないとばかりに無言で立ち去ってしまう。親友の非情とも取れる行動にダレスは珍しく悪態を付くと、再びフィーナに視線を向ける。だが、何と言っていいのかわからないのか言葉が出ない。

「ヘルバさんは、とてもいい方よ。こうやって、この場所に連れて来てくれたもの。でも……貴方がいなくて寂しかったわ。一人で神殿の中で暮らすのは辛くて恐ろしくて、不安なの」

「ですから」

 ダレスが「ヘルバがいる」と口に出そうとしたが、それを遮るようにフィーナが頭を振る。彼女にしてみればヘルバを信頼していないわけではないが、自分の側に常にいてくれたのはダレスで、本当の意味で心を開けるのはダレスしかいないとフィーナは彼にすがるように吐露する。