新緑の癒し手


 フィーナがダレスに対しての想いを募らせていると、耳障りな音を鳴らし扉が開かれた。同時に一陣の清々しい風が室内に舞い込み、彼女の頬を優しく撫で衣服を揺らす。その音にヘルバが戻って来たのだと思い込んだのか、フィーナは彼の名前を口にし出迎えようとする。

 しかし相手が先に発した声音に、フィーナの心臓が激しく鼓動し反射的に振り返る。逆光によって相手の顔を判断することはできなかったが、フィーナが彼の声音を聞き間違えるわけがない。相手が発した声音は間違いなくダレスそのもので、求めていた人物の登場に表情が緩む。

 だが、感動の対面――とはいかないのが、ダレスの方だった。彼にしてみれば「何故、フィーナがこの場所にいる」という気持ちが強く、どうして彼女が建物の中にいるのか問う。

「それは、ヘルバさんに……」

「何をしている」

「怒らないで。私が、連れて行って欲しいと頼んだの。貴方が何も言わず、姿を消したから」

「それについては、申し訳ありません。言うタイミングと申しますか、切っ掛けがなく……」

「一人で平気?」

「その点は、ご安心下さい。一人での生活は慣れておりまして……しかし、どのようにしてこの場所に来られたのですか? それに、その服装も……まさか、あいつが何かをしたのですか?」

 いつもの服装とは違い、尚且つ化粧をしているフィーナ。誰かが彼女に行なったことは間違いなく、それにヘルバが関わっていると見抜いたダレスは彼女の身を案じる。勿論、ヘルバが彼女に何かを仕出かしたわけではなく、寧ろ快く協力してくれたということを話す。

 そして今回の聖都の外への脱出劇には娼婦の面々も関係しており、変装と化粧も彼女達が行なってくれた。尚且つ外へでる時に囮になってくれたので、彼女達には感謝していると伝える。

「そうでしたか」

「だから、大丈夫」

「脱出の件については、わかりました。しかし、訪れる理由はわかりません。何故、危険を冒してまで……」

 ダレスにしてみれば、その点が唯一理解できないでいた。フィーナが神官達の目を欺き聖都の外へ出た今、彼等は今以上に厳しい監視下のもとに置くだろう。結果、彼女の自由は失われ神殿内でも自由に行き来できなくなってしまい、最悪監禁状態になってしまうと忠告する。