「そう、素直が一番だよ」
「では、失礼します」
セインに向かい、頭を垂れるダレス。そして頭を上げると同時に踵を返し、部屋から出ようとした時、彼の耳にセインの本音が届く。煩い奴――その本音に、ダレスの脚が止まった。
やはり、彼は――
ナーバルが心配していた通り、息子の行動は褒められたものではない。彼がダレスを外に追い出した本当の理由というのは、三人目の娼婦と再び宜しくやろうと考えていたからだ。
案の定その考えは正しく、セインはダレスに向かって自身の本音を語った。それを聞いたダレスが素直に従うわけがなく、娼婦に纏っていた外套を被せると外へ連れ出そうとする。
セインはダレスの行動を制するが、ダレスが彼の言葉を聞き入れることはしない。それどころか、心の中で「やはり」と、呟く。自分の予想が当たったことに、ダレスはセインの性欲の高さに驚かされるというか呆れてしまう。底無しと聞いていたが、まさかこれほどとは――
ダレスは、娼婦がセインを毛嫌いする理由を知る。
いや、この場合は嫌悪をいうべきか――
ダレスは呆れ、何も言えない。
「外で待っておりますので、必ず来て下さい。遅くなりましたらどうなるかは、ご自身がわかっているはず。それと、あのように人を謀るようなことなしないで下さい。時間がおしいです」
「も、勿論」
「では、外で――」
「あ、ああ……わかった」
「絶対ですよ」
「しつこいぞ」
「念の為です」
セインの言葉を受け取ると、ダレスは娼婦に被せていた外套を纏い何事もなかったかのように出て行く。相変わらず何を考えているかわからないダレスにセインは冷笑を浮かべるが、今回は彼の言葉に従わないといけない。彼が言うように、遅くなってしまったら父親の逆鱗に触れてしまう。
長時間の説教で済めばいいが、下手すると言葉に鋭い刃物が混じる場合が多々ある。悪魔のような形相を浮かべている父親の顔が脳裏を過ぎった瞬間、セインはブルっと身震いしてしまう。そして遅刻してはいけないと、セインは珍しく着替えと後始末を急ぐのだった。


