新緑の癒し手


 その面白い表情が愉快だったのか、フィーナは思わず噴出し笑い出す。しかし浮かべられた表情は彼女達にとって一番のものだったのだろう、今の表情が愛らしいものだと褒める。

 自分の笑顔が愛らしいと褒められたことに、フィーナは赤面してしまう。同時にダレスが以前言っていたことを思い出し、赤面している顔は先程以上に赤みを増し頬が焼けるように熱い。

「そう、その笑顔がいいわ」

「さあ、着替えましょう」

「貴女にピッタリな服が見付かったわ」

「お化粧もね」

 娼婦は一般的にいいイメージを持たない職業だが、彼女達の心構えと気遣い、また器の大きい部分を総合すると、神殿の中で踏ん反り返っている神官達より彼女達の方が何倍いい。

 ダレスやヘルバのように高い洞察力を持っているわけではないが、フィーナも彼女達が信頼に値する人物と思う。それ以前に自分を癒しの巫女と見ずごく普通の人間として接してくれるのは有難く、特に嬉しいのは「巫女様」と呼び、恭しい態度を取らないということだ。

 フィーナは彼女達の言葉に頷き返すと、椅子から腰を上げ自身の着替えを持つ。礼儀正しいながら何処かオドオドしている姿に初々しさを感じ取ったのか、クスっと笑い緊張しないでいいと言う。

 当初の目的はフィーナやヘルバに協力し、神官に一泡吹かせてやろうという計画であったが、徐々に癒し巫女というより多くの面で世話を焼きたくなる妹のような立場に変わっていく。結果、多くのお姉さん方は妹に協力し上手く聖都の外へ行けるようにと変装させた。




「ママ。どうかしら」

「あら、いいわね」

 何処にでもいそうな普通の女の子に変装させられたフィーナを目の前に、サニアは正直な感想を言う。彼女は今、神殿内で着ていた服と違い街娘が着ていそうな服に着替えていた。また長い髪は帽子の中に納め目立たなくし、尚且つほのかに綺麗に化粧が施されている。

 これなら誰も、癒しの巫女と気付くことはないだろう。だからといって、変装だけで簡単に聖都の外へ出られるほど警備は甘いものではない。聖都唯一の出入り口の門は幾人もの兵士が厳重に警備し、不審者に目を光らしている。よって彼等の目を何とかしなければ、真の意味で脱出は不可能。