時折、ダレスは「用事」と言い神殿の外へ向かう。何か小難しい仕事をこなす為に出掛けていると彼女は考えていたが、まさか娼婦と宜しくやっているセインを連れ戻しだったとは――ふと、脳裏に自分に嫌らしい視線を向けているセインを思い出し、フィーナは身震いする。
「神官といって偉ぶっていても、あのような見習いを律することができないとは……情けない」
「それに、毎回ツケ払い」
「でも、親が肩代わりしたわ」
「肩代わりって、いくつなのよ。確か、いい年齢でしょ? その歳で父親の脛を齧って……」
「此方の方面は、一人前」
「でも、乱暴よ」
「この前なんて、何時間も相手にさせられたのよ。こっちの体力を考えなさいっていうのよ。ああ、御免なさい。貴女の前で、愚痴を言ってしまって。ちょっと、彼に迷惑をしていて」
「だ、大丈夫です」
フィーナもセインに対しいい印象を抱いていないので、彼女達が愚痴を言い続ける気持ちを理解できなくもない。しかし将来何かの理由で彼が見習いの立場から一人前の神官に成長しあれこれと立派な言葉を言ってきたらと思うと、彼女の恐怖心が拭われることはない。
「顔色が悪いわ」
「平気です」
「あの馬鹿を思い出した?」
「……ちょっと」
「神殿の中で、怖い思いをしているのね。仕方ないわよ、あんな欲丸出しの馬鹿がいるのだから」
「無理しなくていいのよ」
「私達が味方になってあげるから」
彼女達の心優しい言葉の数々に、フィーナの心は別の意味できつく締め付けられる。ダレスやヘルバ以外に自分に手を差し伸べ協力してくれる存在が嬉しかったのか、フィーナは目元に溜まっていた涙をボロボロと流し、彼女達に向かい頭を垂れ何度も礼を言い続けた。
フィーナの心からの感謝に彼女達は優しく微笑むと、泣き腫らしては可愛い顔が台無しになってしまうと、ハンカチで頬を伝う涙をそっと拭っていく。そして笑顔を取り戻して欲しいと、彼女達はフィーナの目の前でそれぞれが趣向を凝らし面白い表情を作り笑いを誘う。


