「だけど……」
「娼婦といっても、あの子達は頭がいい。それにこのような面白いもの、滅多にないからね」
「復讐?」
「そんな立派なものじゃない。ただ、あいつ等の困った顔を見ることができればそれでいいわ」
サニアの発言に人間は一枚岩ではなく、同時に神官の自分勝手の行動が同じ人間を不快にしていることを知る。ふと、自分達を娼館に案内してくれた娼婦が「血を滅多に分け与えてくれない」と言っていたことを思い出したヘルバは、それも協力に関係しているのか問う。
ヘルバの問いにサニアの表情が一瞬曇るも、そのことも理由に含まれているということを話す。本来、癒しの巫女の血は全ての人間が平等に使用できるものとされていたが、神官は「汚らわしい奴等」という理由で、場末に生きる者達に癒しの血を与えることを拒絶した。
それでも稀に血を与えるのは、彼等なりの施しの精神か。全ての者に平等に与えているという建前上の理由を欲しているから、場末の者に血を与える。彼等の本質を見抜いているサニアは、それが気に入らないからこそフィーナに味方し協力を申し出たとヘルバに話す。
「……なるほど」
「理解してくれた?」
「勿論。で、俺の姿は?」
「別に、どうでもいいことよ。人間以外の者にあれやこれやと言うほど、器が小さいわけではないわ」
「御見それしました」
「言ってくれるじゃないの」
「そのように言える人間は、今まで会ったことはありません。貴女が最初で、神官より立派です」
「嬉しいことを言ってくれるじゃない」
ヘルバの発言が愉快だったのか、サニアは肩を震わせ笑い出す。その豪快で物事の裏表を見抜く洞察力の高さに、こういう人間が増えれば種族間の問題が解決すると考える。協力に当たって神官への復讐が見え隠れしないでもないが、有翼人を見て動揺しないあたりは器が大きい。
それでも現実は彼が考える以上に複雑で、特に権力を有している者達が他の種族に一方的に嫌悪感を抱いているのだから迷惑この上ない。人間同士でも明確な格差を生み出し差別しているのだから彼等の肝っ玉は小さく、それでいてプライドが高いのだから手が付けられない。


