新緑の癒し手


「ママ。お客様」

「客? 誰だい、一体」

 慌てているような声音に娼館の女主人サニアが、館の奥から姿を見せる。刹那、フィーナの緑柱石(エメラルド)の髪を見た瞬間、サニアは目を丸くしどうして癒しの巫女がいるのか尋ねていた。

「外へ行きたいみたいだけど、二人だけじゃ危ないから連れて来たの。ママ、協力してあげて」

 その言葉に、サニアの眉が微かに動く。だが、彼等を娼館に案内した女と同じ感覚を持っているらしく、一言「それは面白いわ」と言い、フィーナとヘルバを驚愕させる。するとサニアは手を叩き娼館にいる娼婦全てを自分のもとへ呼び寄せると、彼女に協力するように促す。

 サニアの話に娼婦全員が目を丸くし互いの顔を見合うが、その提案が日頃の鬱憤やストレスの発散になると考えたのか、全員が頷き協力を申し出る。どうやら自分達を見下してきた神官達に一泡吹かせられることに快感を覚えたのか、娼婦全員が口許を緩め最高の笑顔を作る。

「それ、面白いわ」

「早速、変装しないと」

「さあ、奥へ行きましょう。外へ行くには、目立たないようにしないと。可愛い服、あったかしら」

「それなら多分、クローゼットの中にあったと思うわ。最近着ていないけど、虫は大丈夫かしら」

「お化粧はどうかしら」

「いいわね」

「アクセサリーも選ばないと」

「派手は駄目よ」

「そうそう、逆に目立ってしまうわ」

「それに、こういう子は落ち着いた服がいいのよ。だって、元がこんなに可愛いんですから」

 娼婦の面々はオドオドとしているフィーナを連れ、建物の奥へ向かう。癒しの巫女と呼ばれ多くの人間から敬愛される存在であっても、彼女達にしてみればフィーナはごく普通の可愛らしい女の子。どのように変身させようかと話し合い、自分達のファッションセンスを披露する。

 騒々しいまでの娼婦達の迫力に圧倒されていたヘルバはフィーナが勝手に連れて行かれたことに気付くと、サニアに彼女達に任せ本当に平気なのかと、不安で彩られた表情で尋ねる。それに対しサニアは「平気」と言い続けるが、いまいち信用できないのか不安は募る。