新緑の癒し手


 悪い部分を覗けば「容姿端麗で金髪と青い双眸を持つ好青年」で通じるが、現実は実に残酷といっていい。片方が突出していればもう片方が引っ込むものなのだが、セインの場合引っ込んだ部分の割合が大きく、結果的にこのようなアンバランスな美形が誕生してしまった。

 何人もの相手に春を与えている娼婦も、セインを相手にする時は下手すると全体力を奪い取られてしまうという。今回の娼婦は、途中でダレスが止めたので全体力を奪われるということはなかったが、あのまま続けていればこの娼婦がどうなっていたか簡単に想像できる。

 一方セインは寝台から下りると、鼻歌を歌いはじめる。三人目は不満足――という部分があったが、その前の二人は自身が満足するまで楽しんだので、いい発散になったのが本音。

「ねえ、外で待っていてくれないかな。同性に着替えを見られる趣味は持ち合わせていない」

「逃げ出しませんか?」

「信用ないね」

「命令がありますので」

「大丈夫だよ。父上が怒ると、恐ろしいからね。行かないとどうなるかは、流石にわかっている」

「わかっているのでしたら、いいのですが……しかし、油断はできませんので申し訳ありません」

「……クソ」

「今、何を?」

「煩い。あー、わかったわかった。着替えたら、外に出るから。逃げないよ。本当だ、信じろ」

 といって、ダレスの心情ではセインの言葉は信用できない。彼は見習い神官として生活を送るより、俗世に混じって生活する方を好んでいるので、ダレスが目を離すと何を仕出かすかわからない。時に予想外の行動を取り、ダレス困らせるのは多々。だからこそ、彼は退室を拒んだ。

 最悪、自由を求めて窓から飛び出るという可能性も考えられるが、セインは身体能力が高いわけではないので窓から飛び出た場合、打撲や骨折は免れない。それにこの部屋は二階に存在し、口では大きいことを平然と言い放つセインだが、いざとなっても二階から逃亡できない意気地なし。

 しかしセインの性格は、一言で言えば「我儘」そのもので、下手に機嫌を損ねると後々が厄介だ。そのことを知っているので、ダレスは仕方ないという思いの中、セインに従った。それに機嫌を損ねると連れて行く時に暴れ出し、関係ない者に被害がいったらこれはこれで面倒。