「行こう」
「ですが、後片付けが……」
「他の者にやらせておけばいい。ちょうど、多くの神官がいるのだから。それに、早い方がいい」
フィーナもダレスに早く会いたいが、同時に自分が使用した物を片付けないといけない思いも強い。フィーナはヘルバと使用していた物を交互に視線を送ると、どうすればいいか迷う。
なかなか決められないフィーナに業を煮やしたのか、ヘルバは彼女の手首を握り引っ張ると強制的に連れ去ってしまう。突然の出来事にナーバルを含め神官達は抗議の声を上げヘルバの後を追い連れ去られたフィーナを助け出そうとするが、いつもと違い強硬手段を取らない。
採血は密室で行われているので、他者の視線を気にしなくていい。しかし神殿の中では神官だけではなく、血を求める病人や怪我人もいる。その者達に悪い印象を与えられないので、彼等はいつもの行動を取れずにいた。結果、ヘルバにいいように巻かれフィーナを連れ去られてしまう。
「何処へ行った」
「わ、わかりません」
「何だと」
「す、すみません」
「巫女様が有翼人に連れ去られたということは、他の者に伏せておくんだ。知られたら面倒だ」
「わかりました」
「引き続き、巫女様の居場所を捜し連れ戻せ。だからといって、目立った行動は慎むように」
彼の命令に、受け取った者達が一斉に動き出す。一体、巫女は何処へ連れ去られたのか――焼き菓子作りといいナーバルの頭痛の種が増え、心にどす黒い物が広がっていくことに気付く。
◇◆◇◆◇◆
「何処へ行くのですか?」
「ダレスのもと」
勿論、ヘルバが言っているようにダレスのもとへ行くというのはわかっているが、肝心の場所がわからない。それが不安感を誘発しているのか、フィーナは何処へ行くのか明確な場所を提示して欲しいと頼む。だが、ヘルバは「遠くはない」と繰り返し、なかなか話してくれない。


