新緑の癒し手


 敗北感に苛まれていた神官達であったが、予想外の人物ナーバルの登場に彼等の表情が変化した。まさに女神の導きと言わんばかりの態度を取ると彼等はナーバルに一部始終を話すが、全てが正確というわけではなくヘルバを一方的に悪人に仕立て上げ悪口を繰り返す。

「そうか、では……」

 勿論、ナーバルは汚い言葉の裏側に隠された彼等の憎悪を見抜いているが、彼自身も目の前にいるふてぶてしい態度の有翼人を毛嫌いしているので、彼等の言葉を受け入れ嫌悪感を表す。

「何をしている」

「護り」

「護りは別の者だ」

「そいつから頼まれた」

「奴は何処に行った」

「さあ? 知っていても、教える理由はない。それよりあいつを嫌っているのに、居場所など知る必要はない。それに、知ってどうする? 態々あいつを連れ戻しに行くというのか」

 ヘルバの言い分に、ナーバルの眉が微かに動く。まるで人間以外の種族は自分達に従わなければいけないといっているような雰囲気を漂わせるナーバルに、ヘルバは族長の言葉を思い出す。

 相手にするだけ無駄。

 有翼人の族長は全ての人間を見て判断を下したわけではないが、女神に仕える神官のみで評価を下した場合「最悪」の一言に尽きると話す。また自分を立派に見せるのが得意技のようで、詭弁も多い。それに舌に油を塗ったかのように、聞くに堪えない言葉を吐き続ける。

 その中で暮らす、一人の少女。まるで物語の中に書かれている内容そのもので、魔物に誘拐された女の子を想像してしまい不憫に思う。彼が思う魔物というのは神官達で、内面から滲めているどす黒いものが身体を覆い、いつか魔物そのものに変貌してしまうのではないか。

 そのように想像するも、人間の大半が魔物に変貌してしまったそれはそれで厄介である。世界の平穏が崩壊してしまい――と危惧するが、今の状況では遅かれ早かれ世界の平穏は破られる。種族同士での戦争は避けたいところだが、人間の見下しが直らない限り敵は増え続ける。

 人間の悪い部分を総合しているのが、ヘルバの目の前で喚いている者達といっていい。彼等と言葉を交わしていることが億劫になってきたのか、態度で神官達に自分が不快ということを伝えるが、今日に限って勘がいいナーバルがヘルバの態度に全くといっていいほど気付いていない。