新緑の癒し手


 自分では何もできないので、せめて威嚇だけでもしておこうという魂胆だろうが、同時に彼等の気弱な一面を迷惑に表す。所詮、口だけが達者なだけで、それに態度が伴わないのが神官の正体。だからこそこのような奴等の言いなりになっている人間の世界など、地獄そのものといっていい。


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 自由を束縛するのは、彼等の義務か。

 いや、趣味と呼ぶ方が正しいか。

 と、ヘルバは考える。

 案の定、神官達はフィーナの焼き菓子作りにあれこれと文句を言ってきた。危ない、怪我をしてしまう――と言い彼女の身を心配しているように振舞うが、本音が違うことをヘルバは知っている。

 巫女を操りたい彼等にとってフィーナが自分の意思を示すのは不愉快そのもので、どちらかといえば人形として振舞って欲しかった。多くの者の為に血を流し、次代の巫女を産むのが彼女の役割。その二種類だけを素直にこなしてればいいと考えているらしく、彼等の言動は自己中心的。

 だが、フィーナは人形ではなく意思を持つ人間。そして好きに振舞いたいと思うのも意思を持つ人間の証拠であり、焼き菓子くらい自由に作らせてやればいいとヘルバは神官達に言い放つ。


「き、貴様」

「すぐに声を荒げる」

「何だと!?」

「ほら、また」

 自分に都合が悪くなれば、大声を出し相手を威嚇するのが彼等のやり方。ダレスから彼等の特徴を聞いていたヘルバはそれを目の当たりにした瞬間、うんざりとした態度を取り盛大な溜息を付く。彼の態度は更に火に油を注いだらしく、多くの神官の顔が真っ赤に染まる。

 しかし無意味な怒りはその者の思考能力を弱め、ヘルバに有利に働く。一方的な感情論は意味を持たず、それどころか矛盾点を突かれ沈黙を余儀なくされる。また、それ以前に彼等は正当な理由を持ち合わせいないので、放つ言葉は愚痴そのもの。結果、全員がヘルバに敗北してしまう。

 完全な勝利に、ヘルバは相手を見下す。人間と有翼人は相容れぬ種族同士なので、目の前で悔しがっている者達に手加減する必要などない。また、これによりダレスが味わっている苦痛の仕返しが多少できたのではないかと、シメシメと心の中で笑いどす黒い一面を覗かす。