口煩い奴等が、フィーナが焼き菓子を作っている現場を目撃したら何と言うか。顔を歪ませ小言を言い注意を促してくるだろうが、自分達が偉いと勘違いしている奴等の意見など聞く必要もなく、それに言いたいことは言わせておけばいいというのがヘルバの考えであった。
それに、これくらいの自由まで奪う権利を彼等は持ってはいない。多くの者から「巫女様」と呼ばれてもフィーナは普通の女の子。好意を抱いている相手に焼き菓子を作りたいと思うのは普通の感覚で、巫女だからといって感情まで封じることはないと、ヘルバは話す。
「ダレスに似ています」
「俺?」
「はい。ダレスもきちんと物事を把握していて、適切な言葉を言ってくれます。皆様、頭がいいのですね」
「俺より、あいつの方が天才だ。一種の勉強馬鹿というべきか、それもと本の虫というか……そんな奴だ。まあ、長い時間あいつは生きている。その間に、様々なことを吸収したんだろう」
「ヘルバさんは?」
「勉強は苦手だ」
「そう思えませんが」
苦手と自己評価を下すが、ヘルバは決して頭が悪いわけではない。本での勉強は苦手としているが、生きていく面での洞察力は長けているので、神官達の行動を読み彼等の心情にいち早く気付くことができる。そして、あらゆる面で阿呆なのはセインではないかとヘルバは思う。
といって、フィーナ相手にセインの改善すべき点を語る必要などない。それに語っている間の時間が物凄く勿体無く、その時間を焼き菓子作りに使用した方が何倍もいい。ヘルバはフィーナに焼き菓子を作るように促すと「自分は見張り」というかたちで側にいると約束する。
「何かありましたら……」
「蹴る」
「あの人のように……」
「勿論」
「ほどほどに」
「了解」
互いに発する言葉が面白かったのか、同時に吹き出してしまう。しかし瞬時にヘルバはいつもの冷静な一面を取り戻すと、フィーナと共に厨房へ向かう。その途中、何人もの神官とすれ違い冷たい視線を向けられるが、ヘルバは平然と歩き心の中で「アホらしい」と、呟く。


