「ご無理はしない方が……」
「無理は貴方よ」
相談せず自分一人で勝手に決め、相手に勝利を与えるということで自分の肉体を傷付けた。その一連の行動が腹立たしいのか、フィーナは珍しく声を荒げダレスの行動を非難する。だが、それは全てダレスを想っての行動であり、その証拠にフィーナの頬を涙が濡らす。
「もう、二度と……お願い。ダレスは、自分のことをもっと考えた方がいいわ。だから……」
「再び殿下と対決がありましても、あのように血を流すことは行ないません。正々堂々と戦います。このことにより殿下の小言を聞くよりも、フィーナ様に泣かれる方が何倍も堪えるとわかりました。やはり貴女様は、笑っている姿が素敵です。だから、どうか泣くのをお止め下さい」
「なら、もう……」
ダレスの懇願にフィーナは頬を伝う涙を拭うと、傷の手当てを手伝いたいと言い出す。勿論、彼女の心遣いは嬉しいが血で大事な衣服が汚れてはいけないと、ダレスは丁重に断る。
しかし片腕が不自由の中での手当ては思った以上に苦戦を強いられ、特に包帯は巻きづらい。見兼ねたフィーナはダレスから包帯を奪い取ると、おぼつかない手付きで巻いていく。
「きつくないかしら」
「大丈夫です」
「あとは、これで……」
一通り包帯を巻き終えると、端と端を解けないようにきつく縛る。案の定フィーナの手や衣服は血で汚れてしまったが、血を見ても先程のように強い恐怖心は湧いてはこなかった。それどころかダレスの手助けをすることが嬉しかったのか、心の中に温かいものが広がる。
「助かりました」
「いいの。それより、身体は平気? 多くの血を流したと思うけど、気分は悪くないかしら」
「幸い、そのようなことはありません。まだ痛みや苦しい部分はありますが、それ以外は……」
「良かった」
彼の言葉にフィーナは、ダレスの体内に流れる巫女の血の影響で高い治癒能力を持っていることを思い出す。だが、いくら治癒能力が常人より高いとはいえ大量出血を伴う傷を瞬時に癒せるわけがない。現に、巻いたばかりの包帯は滲み出た血によって赤く染まっていた。


