いつになく厳しい言葉を言い続けるナーバルに、セインは目を合わせられないのか彼は視線を逸らすと気まずい表情を作る。勿論、何故父親が辛辣な言葉を続けるのかは理解できるが、セインの方にも言い分がある。しかしそれを面と向かって言っては、雷が落下してしまう。
女心は複雑。
父親を恐れ面と向かって言えないセインは、心の中で父親に反撃していく。すると息子の心の中を簡単に見抜いたのか、ナーバルは息子の情けない面を突き毒が混じった言葉を言い放った。
父親が放つ言葉のひとつひとつが、セインの心に無数の鋭い針を突き立てていく。父親の精神面への攻撃力は相当の威力を持ち、気を緩めれば前のめりに倒れそうな雰囲気だった。
「わかったか?」
「……はい」
「期待する」
返事を期待していないのか、息子からの言葉を待たずにナーバルは踵を返し神殿の中へ戻る。父親からの圧力から解放されたセインは盛大な溜息を付くと、額に滲む汗を拭いその場に崩れ落ちる。そして己の胸に手を当てると、力強く心臓が鼓動していることに気付く。
自分が不甲斐ないので、厳しい評価を下されてしまった。自己の成長を望み父親の信頼を勝取る為の努力を怠らない者であったら、下された評価を素直に受け止め自己の成長に繋げる。
だがセインは何を思ったのか、最低の評価を下されたのは自分が悪いのではない別の人物に責任があると責任転換をしだす。セイン曰く「自分は高貴な血を引く人間、最低な評価は有り得ない」という。だから最高の評価を受けるには、邪魔者を排除するのが手っ取り早い。
あいつが悪い。
あいつがいるから。
フィーナに肉体に流れている高貴な血に付いて語ったように、彼は地位の高さに固執していた。セインは能無しの阿呆と一部の者から揶揄されているが、好き勝手に自由に振舞えるのは名門の家系に属しているからと理解している。だから、父親の評価を過度に気にしていた。
(あいつが……)
受け継いでいる血筋では、セインが目の敵にしているダレスに勝っている。それに容姿の面や知識も勝っていると自負しているが、自身の父親同様に面と向かって対決できない気の弱い者。彼が唯一できるのは身体の奥底から溢れ出す憎悪を相手に向け、心の声で相手を潰す。


