「安心していいです。あいつは強い」
「それは……わかるわ」
「そうですね。強いからこそ、巫女様の守護者としたのです。父を含め他の者もそれを認めています」
別に、ダレスが強いという確信が欲しいわけではなかった。フィーナが女神に祈りを捧げていたのは、彼の本心を知っているからこそ互いに怪我なく無事に終了して欲しいと願った。それに彼の言い方は「剣の腕があるから使ってやっている」と、聞こえて仕方がない。
知力と武芸に秀でているダレスは、何も持ち合わせていないセインにとっては目障りでしかないが、唯一勝るのは生まれ持っての高い地位。いくら巫女の血を引いていても、半分は汚れている。そして彼の言葉の端々に見え隠れするのは、自分の体内に流れる血の自慢。
代々神官を輩出する家系に誕生した、全ての面で女神に仕えるのに相応しい人物と自画自賛する。ダレスの剣の腕前に付いて当初は語っていたが、何処をどのように間違えれば自慢話になってしまうのか――舌に油を塗ったかのような喋り口調に、フィーナはうんざりしてくる。
同じように高貴の血が流れている者なら、フィル王子の方が何倍・何十倍も素晴らしい人物といっていい。王子という地位に溺れることはせず、日々の鍛錬を欠かせない。また、膨大な書物に目を通し見聞を広め、国民に愛される良い王を目指しているとダレスが言っていた。
貴方は何?
本当に見習い神官。
フィーナはセインが娼婦相手に宜しくやっていることを知らないが、彼の身体に染み付いている何とも表現し難い臭いを嗅ぎ分けたのか、彼女は顔を引き攣らせると足早にセインの側を離れた。
「逃がしたか」
「馬鹿者が」
「今回は、タイミングが悪かったのです。どうも、機嫌が悪かったようで……仕方ありません」
「言い訳はいらん」
「次は必ず」
「そう願いたいものだ」
フィーナを取り逃がし悔しがっているセインに辛辣な言葉を掛けたのは、彼の父親のナーバル。女の扱いに長けていると自負していた息子だが、蓋を開ければこのようなもの。所詮、女の扱いに長けているのは下半身の方で、弁論に関してはいまいちとナーバルは評価を下す。


