それぞれが用いている剣の型に統一性は感じられず、フィル王子の場合は体格に似合わず力で相手を捻じ伏せる攻撃型と言っていい。一方ダレスはフィル王子とは違い、攻撃と防御を上手く使い分ける。そしてダレスは誰かに教えを請うということはしておらず、独学で剣を学んだ。
一般的に独学や自己流で剣の腕前を高めるのは困難されているが、ダレスは血の滲む努力で今の力を身に付けた。しかし、それが悪影響を齎し「血の影響」と敗者から罵られる原因となっている。
だが、フィル王子が言う。
本当に強い者は、手合わせすればわかる。
そう言い、彼の心を救う。
フィル王子の剣の実力は相当のものだからこそ、ダレスの真の実力に気付く。強い者は己と同等それ以上の実力を持つ者を嗅ぎ分けられ、相手にそれ相応の誠意を尽くす。つまり彼の実力に気付いていない者は、己が弱いということを世間に知らしめているのだが、それさえわかっていない。
「腕を上げたか?」
「そう思われているのならそうでしょう」
「此方が力を付けても、お前はすぐにその上を行く。なかなか追い付けない……だが、それがいい」
簡単に追い付いては、ダレスは好敵手になることはできない。それに目差す者が大きければ大きいほど、それに向かい突き進み必然的に実力が身に付いていく。確かに、今の実力ではダレスに適うことはできない。それでもこのように彼と剣を交えるだけで、全身が高揚した。
ダレスとフィル王子の熱い戦いが繰り広げられている中、神官の中に混じり観戦しているフィーナは何処か落ち着きのない様子だった。彼女はダレスが剣を弾く度にか細い悲鳴を上げ、時折恐怖心のあまり視線を逸らす。また、無事に手合わせが終了することを女神に祈った。
「ご心配ですか?」
両手を胸の前で組み捧げているフィーナに声を掛けたのは、毛嫌いしているセイン。恐怖心に似た嫌悪感を抱いている人物の登場に、フィーナは無意識のうちに彼との間に距離を取った。彼女のつれない態度にセインは態とらしく肩を竦めて見せると、何もしないことを告げた。
しかしその言葉は、別の意味で働いてしまう。セインにしてみれば今の言葉がフィーナの緊張を解き解し、彼女のパーソナルスペースに立ち入れることができると考えていた。だが、現実は大きく異なり、先程以上に不信感を持たれてしまう。彼女にしてみれば一度味わった恐怖心をこの程度で解消できるわけがなく、それ以前にセインの下心を見抜いていた。


