拒絶の意思とは違う何かが、彼女を突き放す。相容れない存在同士、近寄っていい距離が存在する。それに立ち入ろうとしたフィーナを突き放し、ダレスは心内を奥底に仕舞いこんだ。
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ダレスとの対決は、神官達を驚愕させた。しかし王子の頼みもとい命令で、彼等は了承する。やはりフィル王子の読みは正しく、相手が相手だけに思った以上に事はすんなりといった。
再びダレスと剣を交えられることに、フィル王子の嬉しくて仕方がなかった。強い相手と戦うことに喜びを覚え、尚且つ自分の能力と技術が高められることを確信していたからだ。
また、ダレスの予想も的中する。案の定フィル王子は真剣を用いての戦いを求め、それを手渡す。真剣を用いることを聞いていなかった神官達は青褪め用いることを止めたが、フィル王子は聞く耳を持たない。それどころか真剣を用いた方が互いの実力が測れると、言うことを聞かない。
それでも一国の王子の身に何かがあった一大事と懸命に説得するが、説得が通じる相手ではない。それならダレスを説得し負けるように仕向ければいいと考えた数名の神官が、彼に耳打ちをする。短時間で負けろ――と囁かれる言葉にダレスは頷き、返事を返していた。
「……わかっています。そのように仰らなくても、最初から負けることを前提で俺は戦います」
「それでいい。もし、殿下の身に何かあったら取り返しの付かないことになってしまう。その言葉、忘れるな」
何事にも文句を言わず自分達に従うダレスだが、今回の対決の勝敗だけは異論を唱えると神官達は考えていた。しかし彼からの言葉は普段と同じ服従そのもので、彼等は拍子抜けしたもののダレスが自分達に従う意思を持っていることに満足したのか、誰もが口許を緩める。
これで王子の身の安全が保障され、更に名前と名誉を傷付けないで済むと確信する。彼等はフィル王子が勝利することより、敗北の方を恐れた。敗北という不名誉な結果に王家と神殿側に亀裂が走れば、自分達が懸命に築き上げてきたものが一瞬にして崩れ去ってしまう。
本質的な部分ではダレスと神官達の意見は一致しているのだが、それには私利私欲は含まれておらずどちらかといえば自己犠牲の精神が強い。また、真の意味でフィル王子を心配しているのもダレスしかおらず、己が敗北することによって全てが丸く治まると見抜いていた。


