「それが、役割です」
「変よ」
「フィーナ様のように純粋なお心をお持ちになる方にとっては「変」と、捉えるかもしれません。それでも、俺は役割を果さなければいけません。物事に裏表があるように、立ち位置にも裏表があります。光が差す場所にいる者がいれば、影が覆う場所にいる者が必要となります」
「それがダレス?」
正しい解答に、ダレスは頷き返す。そもそも産まれた時点で光が差す場所に立つことは許されず、だから永遠に影が覆う世界で生きようとダレスは考えていた。それにこれはこれで満足しているのでフィーナが心を痛めることはないと言うが、彼の無表情に変化があったことを見逃さなかった。
やっぱり、苦しいんだ。
そう、ダレスの心情をフィーナは見抜く。
彼は「役割」と言っているが、そのように演じなければ生きていくことができないと彼は知っている。それが周囲との摩擦を最小限に留める方法で、また自分の力を解放しない為の手段。
おぞましい姿を人前に晒すくらいなら、役割を受け入れ生きていく方がいいとダレスは思う。
もし、何事もなく普通の生活を送っていたとしたら違っていのだろうか。ふと、フィーナは彼の性格に付いて考えはじめる。常に無表情の彼は、何か特別な理由があるのだろうか。また、それが解決すれば喜怒哀楽を明確に表し自分に笑いかけてくれるのだろうか――
「……笑顔」
「笑顔?」
「ダレスって、笑うのかなって」
「申し訳ありません。笑顔は……それに長い年月笑っていませんので、笑い方は忘れました。何故、そのようなことをお聞きに?」
「その……いつも無表情だから、ちょっと気になって。それにダレスが影の世界に生きていると言っていたから、それが笑顔を作らない原因なのかな? と、思ったの。違ったら御免なさい」
「いえ、間違ってはいないと思います。それに、申し訳ございません。ご期待に沿えず……」
長い年月がどれくらいのものなのか、ダレス自身も覚えていないという。ただハッキリとしているのは母親が亡くなる以前から、全ての感情を封じて生活してきた。いや、唯一表面に表せるのは怒りの感情だけ。現にフィーナが触れようとした時、彼は感情を露にした。


