「怖いのですか?」
「うん」
「そうですね。フィーナ様は、採血の苦しみが……ですので、他人の流す血など見たくはないでしょう」
フィーナの気持ちを考えず、勝手に対決を行なうことを決めてしまったことにダレスはフィル王子に代わり謝る。それに対しフィーナは反射的に頭を振ると、謝って欲しくて嫌な顔をしたのではないと説明する。しかしダレスの不穏の気配に付いては、やはり聞けなかった。
「フィーナ様には、先に申し上げておきます。今回の対決……俺は負けようと思っています」
「どうして?」
「その方が、あの方の将来に繋がるからです。殿下は、いずれ王座に就く大事な身。多くの者の信頼を得られなければ、上に立つことはできません。だから、俺のような者に勝負で負けては……だからこうするのです。それにこのような役割は、俺が適任です。いや、俺にしかできないでしょう。それにこうしなければ、周囲にいる神官が納得しないでしょう」
「王子様の気持ちは?」
「殿下のことですから、これを知ったら怒るでしょう。真剣勝負をお望みのですから。勿論、殿下のお気持ちはわかります。ですが、互いの立場を考えればこれが一番いい方法です」
「怖くないの?」
「殿下ですか?」
「そう」
「それは承知の上です。無礼な態度を取ったといって、激昂されるでしょう。しかし、それしか……」
「なら……」
「ですから、こうしないといけないのです。申しました通り、俺と殿下は置かれている立場が違います」
ダレスが語る内容にフィーナは彼が放つ不穏な気配の意味を知るが、本当にそれでいいというのか。いや、それ以前にどうしてダレスだけが貧乏籤を引き続けないといけない。その理由の中に、巫女の血を引きながら巫女になれない存在だからというのが関係しているのならおかしいことだ。
それは一部の人間の身勝手な都合で、彼に全ての罪に押し付けるのは間違っている。それに、好きでこのように産まれてきたわけではない。フィーナはダレスの存在を擁護する発言を繰り返し正々堂々の勝負を望むが、彼が彼女の望みが受け入れられることはなかった。


