新緑の癒し手


「さて、神官に言い場所を借りよう」

「神殿の中で、おやりになるのですか?」

「無論だ」

「……わかりました」

 言葉を濁すダレスにフィル王子は、ダレスと神官の確執を思い出す。互いの対決はフィル王子の言葉で神官を納得させることができるが、彼等の粘着質の高い陰湿な性格を思うと後で酷い目に遭うに違いない。それに彼等は根に持つタイプなので、後々尾を引くと厄介だ。

 神官と違いダレスと良好な関係を築いているフィル王子にしてみれば、自身の提案で彼を追い込んでしまうのは心苦しい。だが、本音はダレスと対決しハッキリとした勝敗を決めたい。それなら神官が口出しできない別の場所で行えばいいと提案するが、ダレスは頭を振る。

「いいのか?」

「はい」

「わかった。用意は、私がしよう」

 それに対してのダレスの返事はない。ただ頭を垂れ、フィル王子の言葉に従う意思を示す。彼の意思を受け取ったフィル王子はこれから行なわれることを神官に伝える為に退出し、準備を開始する。

 残されたダレスとフィーナは互いに口を聞かず、長い沈黙を続ける。堪り兼ね最初に口を開いたのはフィーナで、彼女が発したのはダレスの名前。そして再び、二人の間に沈黙が走る。

「ご心配ですか?」

「うん」

「命を奪うものではありませんので、ご安心を。ただ、血を見る場合があるかもしれません」

「血!?」

「殿下は、真剣での対決をお望みでしょう。練習用の剣では、互いの実力は測れませんので」

「駄目よ、そんな……」

「今回ばかりは、仕方ありません。殿下のお望みです。それを叶えないわけにはいきません」

 日々、採血の恐怖と苦しみを味わっているフィーナにとって「血」の単語は、耳にしただけで身体が竦んでしまう。また、血が流れるのを想像してしまい身震いする。どうして互いの実力を測るだけの対決で、血が流されるのか。何ゆえここまで剣の対決に拘るというのか。それに先程感じたダレスからの不穏な気配に、フィーナは心が締め付けられる思いがした。