「剣の腕前?」
「彼の腕は凄い」
「そうなの? ダレス」
「そうでしょう」
「何、謙遜している」
「しておりません」
剣の腕前を褒められても、彼の口調は変わらない。そもそもダレスは自分の剣の腕前を大々的に自慢する性格ではなく、それ以前に自分のことをあれこれと口にするタイプではない。相変わらずの性格にフィル王子は苦笑と共に肩を竦めると、ダレスの剣の腕前に付いて話していく。
途中「脚色し過ぎです」とダレスに言われてしまうが、フィル王子の話は止まらない。ダレスの剣の腕前は、ある意味で「最強」に近い。そして彼に戦いを挑んで負けた者は数多く、現にフィル王子も負けた経験を持つ。それは誉れ高きものであるが、同時に敗者の負の感情を増幅させた。
あいつが強いのは、巫女の血を引くからだ。あいつが持つ力は血の影響で俺達に勝つとは、反則そのものだ。という根も葉もない言い掛かりを付け、自分が負けた理由を正当化していく。
それらの意見に対しダレスは全くといっていいほど反論ひとつしないので言い掛かりは徐々に拡大していき、最終的には巫女の血の影響がなければ弱者と勝手に決め付けられてしまう。
「酷いです」
「彼等は、負けたことに対しての言い訳が欲しかったのだろう。特に自分が一番強いと自負していた者なら、尚更かもしれない。だが、物事には限度というものがある。無論、言っていいことと悪いことも含まれる。しかし、一番の原因はダレスが彼等に反論しないからだろう。何故に、彼等に反論をしない。知識の面でも、相手にした誰よりも勝っているだろう」
「反論の理由がないです」
「だからといって、言われ続けられるのも辛いだろう。これに関しては、お前は何も悪くない」
確かにフィル王子が言うように、彼等に面と向かって反論できればどれほどいいものか。だが、反論できない理由を持つダレスは、フィル王子の言葉を簡単に受け入れることはできない。
ただいつもの無表情を浮かべ、一言「善処します」と言葉を返し、表面上彼の言葉に従う意思を示す。しかし、ダレスの言動と行動が一致するとは限らない。特に今回の件は彼の本質的な部分が影響しているので「善処」の言葉で片付けられるほど生易しいものではない。


