また、彼女自身もダレスが社交辞令を使う人物ではないと知っているので、彼に質問すれば本当の評価を下してくれると考えていた。結果は思った以上の高評価で、フィーナの胸は高鳴る。それ以上にダレスが素敵な評価をしてくれたことに、微かに頬が赤く染まっていく。
だが、急に現実に引き戻されてしまう。今から、フィル・アイオーンという王子に会いにいかないといけない。緊張していないと言ったら嘘になってしまい、彼女の全身が小刻みに震えていた。フィーナはダレスの顔を凝視すると、あの約束を覚えているかどうか聞く。
「覚えておりますので、ご安心を――では、参りましょう。フィル王子が、お待ちかねです」
ダレスが差し出した手は、フィーナに向けられたものではなく彼女がこれから会う人物がいる方向。彼は、他人に触れられることを極端に嫌がっている。これが両者の間に存在する、分厚い壁。触れられないもどかしさを噛み締めつつ、フィーナは一歩を踏み出していた。
◇◆◇◆◇◆
想像と違う。
本当に、王子様?
とても素敵な方。
それらが、フィーナがフィル王子に抱いた第一印象。王族は威厳の塊そのもので、自分とは全く違う雰囲気を持っていると勝手に想像していたが、いざフィル王子に対面してみると見事にそれを打ち砕く。彼の感覚は王子というより庶民に近く、悪い意味で気さく過ぎた。
これでは、フィル・アイオーンは本当に王子なのか――という疑問が出てもおかしくはない。しかしフィーナの目の前にいるのは正真正銘の王子様で、現にダレスが「殿下」と敬称付けで呼んでいる。また、神官達の慌てぶりを見ていると間違いなく本物と証明できた。
ダレスに借りて読んでいる本の中にも多くの王子様が登場し大半が金髪碧眼の王子様だが、フィル王子は金髪碧眼の王子様ではなく、黒髪で茶色の双眸の王子様。ダレスの話では年齢は二十歳を過ぎているというが、年齢と雰囲気が一致しないのはフィル王子の特徴といってもいい。
何より一番フィーナを驚かせたのは、ダレスとフィル王子が知り合いだったということ。いつ何処でどのように知り合ったのかと尋ねるが、ダレスは言葉を濁す。一方フィル王子はクスっと笑った後、ダレスの剣の腕前を知り自分から神殿に訪ねてきたのか切っ掛けと話す。


