彼女達は神官と違いダレスに対し強烈な嫌悪感を抱いているというわけではないが、巫女の血を引く異性ということもあり苦手要素の方が強い。それに気まずい雰囲気を作りたくないというのが彼女達の本音なのか、ダレスのもとから素早く立ち去った理由はこれだった。
しかし、なかなかフィーナが私室から出て来ようとしない。不思議に思ったダレスは彼女の名前を呼び私室に立ち入ろうとするが、慌てた様子のフィーナがダレスの入室を拒んだ。
「駄目」
「いかが致しましたか?」
「笑わない?」
「何を……でしょうか」
「お化粧、して貰ったの」
「そうですか」
素っ気無い言い方であったが、正直そのような言い方しか思い付かない。そもそもダレスの化粧に関しての知識は本で学んだ他に、母親が賢明に何かを顔に付けているというくらしかなかった。その結果、中途半端とも取れる言い方しかできずフィーナを困らしてしまう。
「申し訳ありません」
「謝らなくていいの。いきなり聞いた私もいけなかったし……でも、ダレスの感想を聞きたいのは本当よ。こういうことして貰ったのは、はじめてで……だから、どうやって見られるのか知りたくて……」
「お望みの感想は、言えないと思います」
ダレスは長い年月生きているので社交辞令は弁えているが、フィーナに対して社交辞令は禁句に近いと理解しているので本音を言う。だが、フィーナはそれでもいいから素直な感想を言って欲しいと頼むと、躊躇いの仕草を見せつつ彼の前に姿を現すと急に俯いてしまう。
「ど、どうかしら」
「女性の美に付いて詳しくはわかりませんが、似合っています。宜しいのではないでしょうか」
「本当!?」
「嘘は申しません」
「有難う」
ダレスの高評価が余程嬉しかったのか、フィーナの表情がパッと明るく変化させ頬が緩んでいく。フィーナはフィル王子の反応以上に、普段から自分の側にいてくれる彼の評価の方を恐れた。一番信頼が置ける人物であると同時に、神官と違い上辺だけの言葉を言わないと思っていた。


