「何故、貴方様が?」
「巫女様と一緒に行きたいから」
「それは、上からの命令ですか?」
「いや、個人的に」
上からの命令ではないとわかると、ダレスは間髪をいれず彼の言葉を否定する。彼の否定にセインは食い付いてくるが、これがフィーナの意見と知った瞬間、悔しさに溢れた表情で言葉を封じる。
「何故、ダレスを――」自分を信用してくれない苛立ちからか、ついつい本音が漏れそうになる。それでも返す言葉が見付からないのか、捨て台詞に似た言葉を吐き捨てセインは立ち去ってしまう。
フィーナがダレスと約束を交わしていなければ、セインが彼女を勝手に連れ去った可能性が高い。寸前の部分で彼女の身の安全が確保されたのだが、彼の不可解な行動に疑惑を抱く。彼女が巫女として神殿に暮らしはじめた当初、セインは彼女に特に執着心を抱いていなかった。
それが最近になって明確に表面に表れ、今回もこのようにフィーナの状況を聞いていた。神官達の計画を聞いたわけではないが、ダレスは彼等がフィーナとセインを夫婦にしようと考えているのではないかと危惧する。そうでなければ、あのようにしつこく付き纏わない。
巫女の夫は、権力を得る。
そのように昔から言われているが、性欲中心で物事を判断しているセインが権力に固執するわけがないので、その後ろにいる彼の父親ナーバルあたりが今回の中心人物だとダレスは見る。
巫女の夫が権力を持つというのなら、ダレスの父親は絶大な権力を有していたということになるが、いかんせん種族が人間ではないので周囲の者達――特に神官達が、認めなかった。彼等の感情を文章とし書き記した場合「汚れた種族に、輝かしい座を奪われた」と、記載できる。
現に今でも根に持っており、息子のダレスに八つ当たりするのだからいい迷惑だ。だからといって立場上、フィーナは一生独身を貫くというわけにもいかない。それなら本当の意味で幸せにしてくれる人物と結婚してくれるのが、彼女にとっての最高の幸福といってもいい。
誰がいいか。
真の意味で、幸せにしてくれる相手とは――
ふと、ダレスは現在の自分の考えが子供の将来を心配している親心に似ていると気付く。しかしダレスが危惧するように、フィーナの結婚相手は慎重に選ばないと後で問題が生じる。特にナーバルが全ての権力を握った場合、今以上に神殿内は権力闘争の場となってしまう。


