憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 木崎センパイの言う事が全然信じられなくて、脳内で半笑いになりながらお父さんに助けを求めていると、

 「オマエ、午後の授業サボれ。 ちょっと来い」

 急に木崎センパイに腕を捕まれ、引っ張られながら資料室を出た。

 ワタシの腕をグイグイ引っ張りながら歩く、木崎センパイ。

 ---------見た事あるよ。 こーゆーの、漫画で見た事あるよ。

 『イケメンに、ワケも分からず腕を引かれながら歩く』という、漫画の王道の様な状態に、どうしたって顔が綻ぶ。

 そんなワタシを余所に、木崎センパイは1年の教室には向かわず、直で下駄箱に連れて行こうとした。

 「木崎センパイ、鞄取りに行かなきゃ」

 そう言うと、木崎センパイがピタっと足を止めて振り返った。

 「あぁ!??」

 あからさまに面倒くさそうな顔で振り返る木崎センパイ。

 不機嫌且つ、怒っている様にも見える。

 ・・・怖ッ。

 ウチのお母さんがしている事に、めっさ腹を立てているのだろう。

 でも、お互い様ではないか。

 キミの父上も同じ事してるじゃないか。

 ・・・などと、恐ろしくて言えるはずもなく、

 「お弁当箱、持ち帰んないと。 中身が腐っちゃいます」

 遠慮がちに言ってみる。

 だって、お弁当箱がないと、明日お母さんにお弁当作ってもらえないかもしれないし。
 
 ・・・お母さんに。


 お母さんは、本当に不倫なんてしているのだろうか。