「沙希。 これ、コピーしてあげるから今日のバイト代わってくれるよね??」
実は今日、バイトの日だったりする。
が、折角木崎センパイがワタシに歩み寄ってくれているのに、バイトでみすみすこのチャンスを逃すわけにいかない。
今日木崎センパイの家に行かなかったら、また不穏な関係に逆戻りしそうな気がした。
ので、ちょっとやり方は汚いが、試験プリをエサに沙希にお願いする。
「『よね??』って。 ・・・まぁ、それ欲しいから代わってやるけどさ。 てゆーか、言う程アンタ、木崎センパイに嫌われてないじゃん」
『ヨカッタじゃん』と笑う、沙希。
・・・そうだろうか。 まぁ、好かれてはいない事は確かだ。
しかし、やっぱり沙希の事は大好きだ。
ごちゃごちゃ文句言わずにバイト代わってくれるし、サッパリしていて男らしい。
沙希が男だったら、間違いなく恋に落っこちてたと思うわ。
・・・やだなー。 沙希に彼氏とか出来ちゃったら。 どうしよう、変な男に沙希を取られたら。
ワタシ、号泣すると思う。
「さんきゅうね、沙希」
余計な妄想で無駄にセンチメンタルになりながら沙希にお礼を言うと、
「どーいたしまして。 あぁー。 数学不得意ー」
と、得意な教科など1つもないくせに、次の授業を嘆きながら、沙希は教科書ではなく机からマンガを取り出した。
全ッッ然やる気ねぇな、コイツ。
だからワタシは、沙希が大好きだ。



