憎悪と、懺悔と、恋慕。

 

 「・・・読み辛い??」

 「・・・はい」

 バツが悪そうに問いかける木崎センパイに、正直に答える。

 頭が悪いんだから、意地を張ってもしょうがない。 ちょっとでもいい点数取りたいし。

 「・・・勉強、教えようか?? ・・・ウチ来る??」

 木崎センパイの言葉に、思わず目を見開く。

 木崎センパイが『もう、木崎センパイの家には行きたくない』とか数々の暴言を吐いたワタシを、家に誘ってくれた。

 木崎センパイが、ワタシとの間に作った壁を崩してくれている様な気がした。

 嬉しかった。

 その壁を、取っ払ってしまいたいと思った。


 「・・・今日の晩ゴハンは何ですか??」

 「クリームシチューにする予定・・・って、食う気かよ!! ・・・別にいいけど・・・親父も一緒に食うかもよ」

 図々しいワタシに、木崎センパイが乗り突っ込みを入れた。

 なんだ。 木崎センパイって、結構喋り易い人なんじゃん。

 気難しそうに見えていた木崎センパイへの苦手意識が、どんどん薄まる。

 ・・・てゆーか、木崎センパイのお父さんもいるのかぁ。

 それはだいぶ嫌。

 でも、木崎センパイともっと喋りたいと思った。

 「別にいいですよ」

 「じゃあ、また校門の前で待ってる・・・って、オレ、次移動教室なんですけど!!」

 木崎センパイがそう言った瞬間、始業を告げるチャイムが鳴った。

 『じゃあ、また後で!!』と、慌てて木崎センパイは走って行ったけど、次の授業には絶対間に合わないだろう。