憎悪と、懺悔と、恋慕。

 


 「じゃあ」

 顔を上げ、立去ろうとする木崎センパイの制服を掴み、引き止める。

 「ちょ!! ちょっと待って下さい!! なんで英語、筆記体で書いてるんですか!?」

 目に留まった英語のプリントの字体に驚き、焦った。 長文問題なんて、パッと見『外国人のラブレターか??』くらいのオシャレ感さえ漂う、木崎センパイの解答欄。

 もちろんワタシは、英語も得意ではない。 ブロック体で書かれた英語すら読めなかったり、ナチュラルに書き間違える様な人間だ。 

 「・・・・・・あぁ。 いつもはブロック体で書いてるんだけど・・・そん時急に腹痛くなって・・・。 筆記体の方が早く書けるじゃん??」

 木崎センパイが、ちょっと恥ずかしそうに答えた。

 ・・・ヤバイ。 笑いそう。

 木崎センパイ、テスト中にまさかの・・・。

 「・・・下痢ですか??」

 「・・・早川さん、オブラートに包んだものを、何でわざわざ剥ぎ取るの??」

 苦笑いをする木崎センパイに、

 「ククッ」

 我慢出来ずに、普通に笑ってしまった。