憎悪と、懺悔と、恋慕。

 

 木崎センパイのお母さんと談笑をしていると、

 「すき焼き出来た」

 木崎センパイがワタシたちを呼びに来た。

 木崎センパイは、すき焼きを作っただけでなく、ダイニングテーブルにキレイに食器もセットしていた。

 お皿くらい運ぶのに。

 それさえも手伝って欲しくなかったという事か・・・。

 てゆーか、すき焼きに入ってるお肉、絶対高いヤツだ。

 ゴメンよ、弟。 お姉ちゃんばっかりおいしいゴハン食べちゃって。

 ・・・弟は今日、お母さんの晩ゴハンを食べているんだよね??

 気になって、ポケットから携帯を出して弟にLINEメッセージを打つ。

 〔今日の晩ゴハン、何だった??〕

 ワタシのメッセージはすぐに既読になり、弟からの返事も速攻で来た。

 〔お母さん、今日人手が足りなくてシゴト長引くらしいから、さっきコンビニでお弁当買って来たー〕

 嫌な予感は的中しているのかもしれない。

 今までも、お母さんがシゴトを理由に帰りが遅い事は割りとあった。

 ずっと『お母さん、大変だなー。 偉いなー』などと思っていたけれど、今となっては全部不倫の口実だったように思えてならない。

 本当にシゴトであって欲しいけど、多分違う。

 だって、木崎センパイのお父さんもタイミング良くシゴトが長引くなんて不自然だ。