・・・てゆーか、忘れてた。
そうじゃん。 テスト近いじゃん。 すき焼き食ってる場合じゃないじゃん。
ワタシは木崎センパイと違って、頭の回転がすこぶる鈍い。
帰ったらテスト勉強しなきゃなー。
しかしながら・・・。
「・・・スゴイですね。 医大なんて」
ワタシには到底無理だ。 前回のテストは、徹夜で必死に勉強したというのに、数学も化学もギリ平均点だったし。
「どうせ医大だって、ワタシの足の事を勉強したくて行くのよ。 きっと。 重いのよねー、そーゆーの。 一人息子なんだから、経営学部でも行って木崎グループ継げっての」
木崎センパイのお母さんが木崎センパイに細い目を向けると、
「『木崎グループ継げ』って方が重いだろうがよ」
木崎センパイが細い目を仕返しながらも『フッ』と少し笑った。
「あ、莉子ちゃん。 莉子ちゃんもテスト勉強しなきゃだよね?? もしだったらウチでしない?? 分かんないとことか湊に聞けばいいし。 ワタシも莉子ちゃんが来てくれると嬉しいし」
木崎センパイのお母さんが、閃いた様に突然とんでもない提案をした。
木崎センパイの顔が、尋常じゃなく曇る。
・・・こっちだって、そんな嫌そうな顔する木崎センパイになんて教えて欲しくないっつーの。
「・・・ワタシも夜にならないと頭が冴えないタイプなので・・・」
木崎センパイの言葉をパクってやんわり断る。
言っててちょっと笑いそうになった。
ワタシの頭は、夜になっても冴えない。



