憎悪と、懺悔と、恋慕。

 


 そして沈黙。

 木崎センパイにとって、仲が良いワケでもない・・・と言うか、嫌悪感さえ抱いているだろうワタシに話したい事など『母親の不倫をやめさせろ』しかない。

 そんな木崎センパイが、ワタシに話題を考えて振ってくるなんて事はするワケもない。

 無言の気まずい時間が流れる。

 ・・・何か、たわいもない話はないだろうか。

 「・・・木崎センパイのお母さんも『綾子』って名前なんですね」

 気まずすぎて何を思ったか、全然たわいもなくない話をし出してしまった。

 自分の阿呆さ加減に驚愕する。

 木崎センパイの右眉が『ピクッ』と動いたのが見えた為、視線を合わさぬ様慌てて明後日の方向を見た。

 「・・・呼び間違えようもない女と不倫。 ふざけてるよな、親父」

 怒りを握り潰すかの様に、木崎センパイが『ぐっ』と拳を握った。

 「・・・・・・」

 最早返事もしない。

 もう喋らないでおこう。

 余計な事は喋らない。

 木崎センパイの気分が悪くなるだけだから。

 ・・・なのに。