憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 「なんで素直に『カワイイ』って言えないのかしらね、このコは。 だからモテないのよ」

 木崎センパイのお母さんが、木崎センパイに向かって『イィー』と歯を見せながら顰め面をした。

 『そのリアクションは若干古いな』と思いつつも、やっぱり可愛いかった。

 そんな木崎センパイのお母さんの顔を見て、木崎センパイが困った様に、でもちょっと嬉しそうに笑った。

 ・・・このマザコンめ。

 「あ、ねぇ、莉子ちゃん。 今日ウチで晩ゴハン食べてかない?? 今日、カレーにしようと思ってて、お肉もたくさんあるし、カレーっていっぱい作った方がおいしいし」

 木崎センパイのお母さんが、『グッドアイディア』とばかりに自分の左手のひらに、右手の拳を『ポン』っと置いた。

 ・・・その古いリアクションは、可愛いから許されるけど、ウチのお母さんがやったら処刑モンだわ。

 そんな木崎センパイのお母さんは、ニコニコ笑ってワタシを見ているけど、その隣にいる木崎センパイは、物凄い目でワタシを睨んでいた。

 分かっている。 そんな怖い顔しなくても、ちゃんと分かってるのに。