憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 
 「ワタシ、ホントは女の子が欲しかったのよねー。 でも、出来なくって。 まぁ、男の子は男の子で可愛いんだけどねー」

 あっと言う間にケーキを食べ終えた木崎センパイのお母さんが、コーヒーを啜った。

 「・・・そう・・・なんですか」

 もう1人子どもを作れなかったのは、きっと怪我をしてしまったからだ。

 何て返事をしたらいいのか分からない。

 「ワタシの足の事、湊から聞いた??」

 ワタシの戸惑いを余所に、木崎センパイのお母さんの話は続く。

 「・・・はい」

 「そっか。 湊の前では『ホントは女の子が欲しかった』なんて気軽に言えなくて困っちゃう。 そんな事言おうものなら『オレのせいだ』っていつまでも落ち込むから、あの子。 ワタシは何にも後悔してないのに。 湊が無事なら、自分の事なんてどーでもイイのにね。 親ってそういうモンなのに。 何回言ってもダメなのよねー。 いつまでもグヂグヂグヂグヂしてさー。 ホンットしつこい」

 木崎センパイのお母さんは、なんてサッパリした人なのだろう。

 お母さんが不倫なんかしていなかったら、きっと木崎センパイのお母さんと楽しく会話出来ただろうに。