「で、コーヒーとお茶、どっちがいい??」
木崎センパイのお母さんが、器用に車椅子を動かしながらキッチンに向かった。
「ワタシ、やりますよ!!」
足の悪い木崎センパイのお母さんに、ワタシごときのお茶を用意させるのは忍びない。
慌ててワタシもキッチンへ行こうとすると、
「早川さんはお客様なんだから、何もしなくていいの!! ワタシ、車椅子なだけで何でも出来るのよ?? キッチンだって、車椅子用の高さになってるし、この車椅子だって電動だから楽ーに移動出来るし。 だから、早川さんは変に気を遣わないで。 で、コーヒーとお茶、どっち??」
木崎センパイのお母さんに笑顔で拒否された。
そりゃそうだ。
キッチンは主婦の聖地。 赤の他人にいじって欲しくなんかないだろう。 よりによって、ワタシなんかに・・・。
ちょっとでもイイ子に思われたくて、考えなしに出した親切心が恥ずかしい。
あぁ、もう。 帰りたい。



