憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 トイレを出て、木崎センパイの部屋に戻ろうとした時、

 「待って、早川さん」

 リビングから、木崎センパイのお母さんが顔を出した。

 「どうされました??」

 「あの子、『オレが飲み物用意する』って言ったのに、全然取りに来ないんだもの。 あんな子ほっといて、ちょっとリビングでお茶しない?? おいしいケーキもあるの」

 木崎センパイのお母さんが『おいでおいで』と手招した。

 「あ、じゃあ、木崎センパイ呼んで来ます」

 さすがに、何も言わずに木崎センパイのお母さんとお茶をするのはマズイだろう。

 木崎センパイの部屋に戻ろうとするワタシを、

 「呼ばなくていいわよ。 大事なお客様にお茶出さない様なアホに食わせるケーキなんかない」

 木崎センパイのお母さんが、意地悪な顔をして笑いながら止めた。

 きっと、木崎センパイのお母さんみたいな人を『チャーミング』と言うのだろう。

 あまりにも愛くるしく笑うから、

 「・・・そうですね」

 木崎センパイのお母さんと一緒に、リビングに行ってしまった。