憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 「早川さんの飲み物は、後でオレが聞いてオレが持ってくから」

 木崎センパイが、半ば無理矢理車椅子を押し、木崎センパイのお母さんをリビングに押し戻した。

 『別に邪魔しないのにー』と頬を膨らます木崎センパイのお母さんは、ウチのお母さんと同じ様な年齢だろうのに、とても可愛かった。


 「オレの部屋、こっち」

 木崎センパイが手招きをした。

 リビングを出て、突き当たりが木崎センパイの部屋らしい。 木崎センパイがドアを開けると、広くてキレイに片付いた部屋が見えた。

 木崎センパイは、あまり物を置かないタイプらしい。

 無駄なものが1つもない、木崎センパイの部屋。

 木崎センパイが、

 「適当に座って」

 と言うので、部屋の真ん中にある小洒落たソファーに腰をかけた。

 うわぁ。 ふっかふかやん!! さすがお金持ち!!

 思わずお尻でジャンプする。

 「フッ。 コドモか」

 それを見ていた木崎センパイが、少しだけ笑うと、ワタシの隣に座った。

 木崎センパイの笑顔は、さっき見た木崎センパイのお母さんの笑い方に良く似ていて、凄く可愛い。

 もっと笑って欲しいけど、ワタシには無理だ。

 だってワタシは、木崎センパイに嫌われる理由はあっても、好かれる要素が何も無い。

 大きな大きな嫌われる原因だけしか、持ち得ていない。