憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 「・・・早川さん、ゴメン。 靴、アリガトウ」

 そう言うと木崎センパイは、『ちゃんと謝ったから』と木崎センパイのお母さんに視線を落とした。

 木崎センパイのお母さんは『はい。 よろしい』と満足気な顔をすると、

 「早川さんはお茶とコーヒー、どっちが好き?? 後で湊の部屋に持って行くから」

 と、ワタシに微笑んだ。

 「あ、お構いなく!! スイマセン、手ぶらで来てしまいまして・・・」

 そうだよ。 『オレん家行かない??』って言われて、なんで菓子折りとか買わなかったんだよ、ワタシ!!

 「構うわよー。 構いたいわよー。 だって嬉しいんだもん。 湊がお友達連れて来てくれて。 それに、高校生が手土産なんか用意しなくていいの!! で、どっち??」

 言葉通り、本当に嬉しそうにホクホクな笑顔の木崎センパイのお母さん。


 『湊のお友達』・・・お友達なんかじゃない。

 喜んでもらう資格もない。

 だってワタシは、木崎センパイのお母さんの旦那様の愛人の、娘だ。