憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 早川さんが可愛くて、いじめたくて、早川さんの額に軽く頭突きをした。

 「そうなんです。 あのK大医学部に現役合格です。 どちらかといえば、頭は良い方です。 言い辛いんだけど、早川さんの方が・・・『好きって言われて嬉しかった』って言ったすぐ後に『好きって言ってくれるな』的な事言い出す支離滅裂さ。 ・・・頭、大丈夫??」

 そして、頭皮と頭皮をすりあわせながら、ゴリゴリと頭蓋骨を擦りつける。

 「痛い痛い!! 禿げる禿げる!! 頭バカになる!!」

 早川さんが、両手でオレの頭を引き剥がした。

 「残念なお知らせだけど、結構もう手遅れの域じゃん??」

 早川さんが可愛くて、面白くて、更にいじめる。

 「全然まだ巻き返せますけど!! 大体木崎センパイだって『諦めたらそこで試合終了』って言ってたじゃないですか!! 木崎センパイこそ支離滅裂ですよ!!」

 早川さんは、ごくたまにまともな返しをしてくる。

 だけどオレは、早川さんより頭が良い分、口も達者なわけで。

 「だから、オレの事諦めんなっつってんだろーが」

 今度は早川さんのほっぺを両手で引き伸ばしてやった。

 「・・・じゃあ、どうすれば良いんですか??」

 ほっぺを伸ばされたまま、オレを見つめる早川さん。

 恋ってスゲエのな。 こんなアホ面でさえ、可愛くて仕方がない。

 「餃子の作り方、教えてあげる。 一緒に餃子作りながら、早川さんのお父さんの帰りを待たせて。 親父がした事ちゃんと謝って、早川さんと付き合う事を許してもらう」

 「木崎センパイの家のゴハンは作らなくていいんですか??」

 「・・・んー。 まぁ、いいっしょ」

 オレ、オカンより自分を優先したのは初めてだ。

 だって、早川さんを諦められない。