憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 「あ、ゴメン」

 腕の力を緩めると、早川さんが少しだけオレから離れてオレを見上げた。

 「・・・ワタシは、結構前から好きでしたよ。 木崎センパイの事」

 早川さんが、うるうるの瞳で微笑んだ。


 -------奇跡が、起こったんだと思った。 でも、

 「・・・早川さん、オレの彼女になってくれる??」

 「・・・それは、出来ません」

 早川さんの潤んだ瞳から、涙が零れた。

 「・・・木崎センパイは何も悪くない。 ・・・だけど、お父さんと木崎センパイのお母さんの気持ちを思うと、木崎センパイとは付き合えない。 
 それに、木崎センパイにワタシじゃ釣り合いが取れないですよ。 こんな、頭も見た目も冴えないワタシなんかと付き合うなんて・・・。 
 でも、木崎センパイに『好き』って言ってもらえた事、木崎センパイに『好き』って言えた事、死ぬほど嬉しかったです。 だって、木崎センパイがワタシを好きになる事なんか、万が一にもないと思ってたから。 ホントに、心臓止まるかと思いました。 まじで死ぬかと思いましたもん」

 ボロボロ涙を流しながら、なのに嬉しそうに笑う早川さん。

 そんな顔されたら、そんな事言われたら、もっともっと好きになっちゃうじゃん。

 手放せるわけがない。