憎悪と、懺悔と、恋慕。

 
 「全然。 何言ってるんですか。 恥ずかしい話、木崎センパイのお父さんから頂いたお金、凄く助かってるんです。 ワタシも家の事をする様になって、バイトする時間なくて、携帯代どうしようって思ってたので」

 『面目ないっス』とわざとふざけて頭を掻く仕草をする早川さん。

 そんな早川さんの手首を、ふざけるのをやめさせる様に掴んで止めた。

 「何で怒んないの?! オレ親父が不倫なんかしなければ、早川さん家は離婚する事もなかったし、早川さんが家事をしなきゃいけなくなる事もなかったし、バイトも辞めずに済んだんだよ!??」

 「・・・それもそうなんですけど、それって木崎センパイに怒っても仕方のない事だし。 木崎センパイが悪いわけじゃないんだから。 それにワタシ、お母さんとも木崎センパイのお父さんとも話をして、自分なりに気持ちに折り合いもついてるんですよ」

 早川さんは、どこかスッキリした顔で優しく笑った。

 両親は離婚したし、早川さんのお母さんとオレの親父は別れた。

 今回の話は、早川さんの中では既に終わったことなのだろう。

 なのに、オレだけが未だにグヂグヂぐぢぐぢ。

 なんてしつこいのだろう。