憎悪と、懺悔と、恋慕。

 


 --------吐き気が落ち着くと、木崎センパイと一緒に事務所を出た。

 「・・・帰るぞ」

 木崎センパイが、ワタシに背を向けて先を歩き出した。

 ・・・・・・」

 無言で木崎センパイの後を付いて行く。

 衝撃がデカかった。 これを頭が真っ白状態と言うのか。 はたまた頭の中がぐちゃぐちゃと言うのか。 兎に角気持ち悪すぎた。 今もさっきの光景が頭から離れない。

 ただ、木崎センパイの背中を見ながら歩いていたら、駅に着いた。

 駅までの道順が分からないワケじゃない。 なのに、ここまで歩いてきた景色を覚えていない。 それくらい、ワタシの頭はいっぱいいっぱいだった。

 改札を抜けて、電車に乗る。 木崎センパイも一緒に乗ってきた。

 「・・・木崎センパイもこっち方面なんですか??」

 「・・・別に」

 『はい』か『いいえ』で答えるべく質問を『別に』で返されてしまった。

 別にって何だよ。

 木崎センパイは、泣きながら吐いたワタシを心配して、送ってくれようとしているのだろうか。

 ・・・違う。

 木崎センパイは、ウチのお母さんの名前を知っていた。 きっと住所だって調べただろう。


 『逃がさないから』


 木崎センパイの言葉を思い出す。

 --------そっか。 ワタシは憎まれても心配されるに値しない。

 1人で帰さないのは、ワタシを逃がさない為なのだろう。