憎悪と、懺悔と、恋慕。

 

 「え?? まさか莉子、ワタシが勢いで言った事を気にしてるとか?? あの時は、莉子が正論翳してくるから頭にきて言っただけじゃない。 ワタシは、結婚した事も莉子と利玖を産んだ事も後悔なんかしていない。 大変な事もあったけど、楽しかったもの。 結婚生活も、子育ても。 幸せだった」

 お母さんが『ふふッ』っと笑った。

 ホっとした。 お母さんが、ワタシを産んだ事を後悔していないと言ってくれた。 ワタシとしては、それで良かったのだけど、

 「お母さん、いくら頭にきたからって、言っていい事と悪い事の判断くらいちゃんとしなよ。 お母さんの姉ちゃんに対するその『そんな事気にしてバカみたい』って態度、腹立つから。 人としてどうかと思う。 ちゃんと姉ちゃんに謝りなよ」

 莉玖は納得いかなかった様で、笑うお母さんに怒った視線を送った。

 莉玖に責められると、お母さんは笑うのを辞め、ワタシにすまなそうな表情を向けた。

 「・・・ごめんね、莉子。 理詰めで責める莉子に負けるのが嫌で『莉玖を引き取りたい』ってわざと莉子が嫌な思いをするだろう事を言ったのに、莉玖の方が更に逃げ道も塞ぐ程の正論を言う子だったのね。 ・・・でも、それで良いのよ。 2人が正しく、良い子に育って良かった。 ワタシに似なくて良かった。 2人は、ワタシなんかに引き取られなくて正解よ。 2人はずっとそのままでいてね」

 お母さんが辛そうに笑いながら、ワタシたちの頭を撫でた。

 3人で笑い合って、そこからはたわいのない話をしながら歩いた。