憎悪と、懺悔と、恋慕。


 「・・・お母さんには、ちょっと可哀想な事してしまったなと思ってる。 莉玖にお母さんの暴言まで話したのは、お母さんを悪者にしてでも莉玖を引き取りたかったから。 お母さんを赦せないって事もあるし、莉玖をどうしても渡したくなかったし、莉子と莉玖をバラバラにしたくなかったから。 ・・・本当は、オレがお母さんを赦して、離婚しないのが1番良い事だったんだろうけど。 ・・・ごめんな」

 申し訳なさそうに謝るお父さんに、胸が痛んだ。

 お父さんは何も悪くない。

 お父さんが離婚を切り出した時、『離婚』と言う言葉があまりにも早く出てきたから、きっとワタシや弟の事は考えていないのだろうと思った。

 でも違った。

 お父さんは、ちゃんとワタシたちの事を考えてくれていた。

 「別にお父さんが謝る事ないじゃん。 これから3人で楽しくやってけばいいじゃん。 オレ、しんみり苦手ー。 ハイ、この話終わりー」

 莉玖が、再び豪快にゴハンを喰らい出した。

 莉玖の言う通りだ。

 お母さんがいなくたって、3人で笑って暮らせば良いんだ。

 なんならワタシが、お母さんの代わりにもなって2人を楽しませれば良いんだ。

 ・・・お母さんの代わり。

 今までワタシは、勉強もしないくせに家の手伝いをしてこなかった。

 ちゃんとやっておけば良かった。

 お陰で、料理は全くと言っていい程出来ない。

 でもこれからは、ワタシが家事をしなきゃ。

 がんばらなきゃ。