「お母さん、お願い。 お願いだから、木崎センパイたちに近付かないで」
上半身を折り曲げて、膝小僧に額を付けながらお母さんに懇願する。
ワタシを疎ましく思っているお母さんに、どうしたらワタシの願いを聞き入れてもらえるのだろう。
自分を嫌っている人間に頭を下げなければいけない屈辱。
それが、自分の母親であるという、やり場のない悲しみ。
唇を噛み締めすぎて、下唇から血の味がした。
『ふぅ』
頭の上で、お母さんの溜息が聞こえた。
「・・・動きたくても動けないわよ。 ・・・ワタシだって、好きな人には嫌われたくないもの」
ポツリそう言うと、お母さんはリビングを出て行った。
「・・・くッ」
身体を折り畳んだまま泣いた。
どうして人は恋をしてしまうのだろう。
恋なんかするから、こんな事になってしまうんだ。



