-------お母さんだ!!
寝室に逃げられぬ様、急いでソファーから飛び起きて玄関に向かう。
玄関には、クリスマスの為に張り切っておめかししたであろうお母さんが、高めのヒールのロングブーツをもたつきながら脱いでいた。
浮わついた母の姿が、ワタシの怒りを更に逆撫でる。
「・・・お母さん、不倫なんかもう辞めてって言ったよね??」
自分でも驚く程の、地鳴りの様な低い声が出た。
『お母さん、おかえり』なんて、言う気にもならない。
「シゴトが長引いたの。 いい加減にして。 疲れてるの」
お母さんが、ワタシを押し退けて寝室に行こうとした。
「お母さんの相手、ワタシの学校のセンパイのお父さんなんだよ?? そんなすぐにバレる嘘が通用するわけないでしょ!??」
『逃がしてたまるか』と、今まで1度も見た事のない、今日の為に買ったであろう母のワンピースの袖を掴んで止めた。
「放して!!」
お母さんは、そんなワタシの手を振り払うと『皺になっちゃたじゃない!!』と、ワタシが掴んでいた部分の皺を両手で伸ばした。
・・・何言ってんだよ。 もう、脱いで洗濯するだけじゃん。
お母さんに、興醒めした。
「・・・いい歳して何やってんの」
呆れた白い目をお母さんに向けると、
「歳なんか関係ないでしょ!?? ワタシはいつまでもオンナなの!! 母親の前にオンナなのよ!!」
お母さんが鋭い視線でワタシを睨みつけた。
こんなお母さんは、初めて見た。
お母さんは、いつも優しく朗らかと言うわけではないが、怒りっぽいわけでもない。
いつもと違うお母さんに、思わず後ずさってしまった。
右足を1歩引いたその時だった。



