誰も通らない、真夜中の道路脇に座り込んだ。
すっかり全身びしょ濡れだ。

毛先から水が滴って、ワンピースがぴったりと体にへばりついている。
寒くて仕方がない。

額を膝に押し付けて、脚を抱えるようにしつ、あたしはそのまま動かない。

大丈夫。
こんな深夜にこんな田舎でこの道を通る人は居ない。

冬の雨が、どんどん体から体温を奪った。






そうして1時間くらい待っていた所だった。


「…ねぇ…」


ふわりと肩に何かが掛かった。
これは予想しなかったから、びっくりした。

体は正直に、反応した。
つまり、びくついた体は弱い女を演じるのに丁度いい。


「ねぇ、大丈夫…?」

柔らかい声に、ゆっくり顔を上げた。

濡れた地面に惜し気もなく膝をつけて、あたしの顔を覗き込む。

サングラスが似合わないと思ってしまう。
仕方ない。そうでもしないと、彼は家に帰ることができないくらい、人気だから。


「…風邪、引くよ」

あたしの肩にかけたジャケットが温かい。

「っ、」

彼があたしに手を伸ばしたから、あたしは後退った。
彼はびっくりして、目を見開く。

あたしのただならない様子を察したのか、彼はサングラスをゆっくり外した。

あたしの目付きは変わらない。