抵抗の中、俺達の存在に気付いた女はこちらを睨んできた。


それを気にするでもなく俺も翔もコンビニに入る。



「バカな女……せっかく助けてやったのに。」
「まぁ、いいじゃないの。彼女がそうなりたいと願ったのだから。」
「さっきは助けたくせに、今度は随分淡白だな。」


翔は無糖珈琲と加糖珈琲を一本ずつ手に取った。


「人間、そんなもんだよ。肉まんとピザまん、どっちがいい?」
「肉まん!」


はいよー、とレジに向かった翔は珈琲二本を差し出し、肉まんとピザまんを一つずつ、それから煙草を店員に注文した。


店員はさっきの奴で、これまたジロジロと俺達を見てくる。


「なんだよ?何か文句あんのか?ちゃんと金払ってんだろ?」
「瑞季、ガラ悪いよ。どーも、すみませんね。」

翔はへらへらと笑って店員から商品の入った袋を受け取った。


店の外に出ると女と警官の姿はなかった。


「はい、肉まん」


紙の袋に入ったホカホカの肉まん。
うん、旨そう。


「いただきまーす。」


一口頬張ると、口一杯に肉まんの旨味が広がった。


「いただきます。」


翔の手にあるピザまんからもチーズの良い匂い。


俺の視線に気付いた翔が、ピザまんを俺の口元に運んでくる。


「どーぞ、食いしん坊の瑞季くん。」



言い方はムカつくが、ピザまんの誘惑には勝てない。

差し出されたピザまんを一口。

「んー!うま!」
「良かった、良かった。」
「あ、翔も肉まん食うか?」
「遠慮しとく。瑞季の方が幸せそうに食べるから。」
「だって幸せだし。」


至極当然なことを言ったのに、隣からはクスクスと笑う声。


「何だよ?」
「いやいや、瑞季らしくていいなって。」
「悪かったな。」
「別に悪いとは言ってないよ。」


翔は煙草が吸いたいようで食べ掛けのピザまんを俺に手渡し、自分は袋の中から一緒に買った煙草を取り出した。


「らしく生きるってのは存外一番難しいことだよ。」
「そうか?」
「そうだよ。例えばさっきの彼女、あれも自分らしく生きた結果だよ。」