「あーあ、あれやっちゃうね。」


コンビニの雑誌を立ち読みしていた俺の隣で、翔は言った。


翔の視線の先は、つい今しがた店に入ってきた女性の客。


彼女を見て、俺も納得した。


「あれはするな、万引き。」
「でしょ。」


なんでそんなこと分かるのかって?

明確な理由はない。

ただ何となく分かる。

罪を犯そうとする人間の臭い。


言葉では表現できない、独特なそれを彼女は臭わせていた。


「どーするんだ?止めるのか?」
「んー、どーしよーか?」


そう話している間にも彼女はお菓子コーナーへと足を向ける。



辺りを警戒しながら彼女は商品に手を伸ばす。



「しょうがないなぁ」


翔はそっと彼女に近付いて、鞄に入りかけようとしていたお菓子を奪った。


「なっ…………!?」
「ごめんね、俺もこれ食べたいんだ。」


翔は彼女の手を引いたままレジへ。

さっさと会計を済ませ、外へと出た。


俺も翔の後を追い、店の外へ。

その際店員が怪しげにこっちを見ているのが視界に入った。